ベトナム・ホーチミン市で2025年7月2日〜5日に開催された製造業専門展示会「MTA Vietnam 2025」が、国内外から高い注目を集めた。今年で21回目を迎える本展示会には、21カ国・地域から計435社が出展。日本からは、ジェトロ(日本貿易振興機構)による6年ぶりのジャパンパビリオンが設置され、中堅・中小企業16社が先進的な製品や技術を披露した。
注目を集めたのは、ジャパンパビリオン内に新設された製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)特設ブースだ。これは2024年にタイ・バンコクで実施された「METALEX Thailand」に続き、ベトナムでは初めての試みとなる。
このブースでは、日本のIT・ものづくり系スタートアップ3社が参加。提供されたソリューションは次の通り:
- 視覚資料を活用したマニュアル作成アプリ
- 設計工数の削減を実現する3Dデータ化ツール
- IoT技術で生産設備の稼働データを可視化するモニタリングシステム
いずれも、ベトナム国内の製造現場における効率化・自動化のニーズに即した提案として、来場者の注目を集めた。
4日間にわたり行われた商談件数は合計500件以上に達し、多くの日本企業が「今後の事業展開につながる有意義な対話ができた」と語った。また、「ベトナム企業の精密加工に対する関心が強まっており、ここ数年で技術力が着実に向上している」という前向きな評価もあった。
一方で、自動化・省人化の導入意欲については地域差が見られた。南部地域では「人件費が依然として低水準で、人手不足の実感がない」とする声があったが、北部では「労働者の確保が困難化しており、今後は南部にも波及する可能性がある」との見方が示されている。
2025年4月に発表された米国によるベトナム製品への関税措置を受け、一部では受注キャンセルが発生するなどの混乱も見られた。しかし、7月2日に両国の協議が妥結したことで、キャンセル案件が再び受注につながるケースも発生。ある日系商社は、「取引先の多くは米国以外にも輸出しており、大きなダメージは受けていない」と冷静な受け止めを語っている。
主催者発表によれば、今年の来場者数は1万3,142人で、前年の1万5,552人から約15%減少した。出展企業の間では、「近隣のビンズオン省(現在はホーチミン市として扱われる)で、6月18日〜20日に開催された別の製造技術展示会(VIMF)と日程が接近していたことから、来場者が分散した可能性がある」との声も聞かれた。
ホーチミン市を中心とするベトナム南部は、引き続き製造業の集積地として高い成長ポテンシャルを有している。今後、人手不足やコスト上昇を背景に、自動化・スマートファクトリー化への関心は確実に高まると予想される。
今回のMTA Vietnam 2025で見られたように、日本企業の持つ技術力やソリューション提案力は、ベトナムの産業高度化において大きな役割を果たすことが期待されている。
参考記事:
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/07/95c3acfd153fe304.html